【対談】税制改革における共通認識は何か

2002年5月15日

ishi_h020515.jpg石弘光 (政府税制調査会会長、一橋大学学長)
いし・ひろみつ

1937年東京生まれ。65年一橋大学大学院経済研究科修了。77年同大学経済学部教授。ミシガン大学、ニューサウス・ウェールズ(豪州)大学等の客員教授を歴任。93年一橋大学経済学部長。98年より同大学学長。財政制度等審議会特別委員。国立大学協会副会長、文部科学省中央教育審議会臨時委員などを兼任。主な著書に「税制ウォッチング」「環境税とは何か」「国の借金」等がある。

honma_m020515.jpg本間正明 (経済財政諮問会議議員、大阪大学大学院経済学研究科教授)
ほんま・まさあき

1967年大阪大学経済学部卒。73年同大学大学院経済学研究科博士課程中退。英国ウォーリック大学客員教授、ロンドン大学STICERD客員研究員、大阪大学副学長などを経て、現在大阪大学大学院経済学研究科教授。経済財政諮問会議議員、税制調査委員などを兼任。主な著作は「租税の経済理論」「新・日本型経済システム」「21世紀日本型福祉社会の構想」等。

概要

マスコミ報道で対立が指摘される政府税調の石弘光会長と経済財政諮問会議議員の本間正明氏が、混迷する税制改革論議での一致点を探るため言論NPO で対談した。日本は今、何のための税制改革を考えなくてはならないのか。当面のデフレ対策だけではなく戦略的に税制改革を構想化するための条件は何か。こうした論点を中心に議論は進み、6月の提言を前に税制改革の目標から、デフレ対策、抜本改革の進め方の共通認識で両者は歩み寄った。

要約

石弘光、本間正明両氏の対談は、政府税調と経済財政諮問会議の議論が多くの点で一致しながら、マスコミの報道が対立点だけをあおっている点への批判から始まった。本間氏は各省庁間でいまだに諮問会議の議論を棚上げにしようとの動きがあると指摘したが、税制改革では基本設計は諮問会議、詳細設計は政府税調で役割分担ができていること、その境目での多少の対立はあるがそれを乗り越えて協力することで合意した。税制改革の目的は、石氏が戦後の経済社会構造の変化と税制度のミスマッチを直すための「税制のあるべき論」での改革に意欲を示したが、本間氏はミスマッチの是正に加えて、経済活性化を軸に据えながら税制改革を戦略化することを主張した。これに対して石氏は活性化が当面の景気対策に引きずられかねないことに懸念を示したが、基本的に理解を示した。税制改革の目標では本来対立はしない中立や活力の租税原則の変更よりも経済成長の方が目標にふさわしいとの考えに両者は理解を示し、実現時期は別にして所得税、法人税の分野では「課税ベースを広くし税率を引き下げる」考えに相違はなかった。将来の日本のタックスミックスについても、抜け穴だらけの所得税は是正が必要だが所得税が基幹税という位置づけは変わらず、消費税の増税はいずれ避けられないとの認識は共通した。その際、石氏は公平の観点から資産課税の強化を主張し、本間氏は相続税減税に異論を示した。税制改革と財政バランスとの関係については、本間氏が減税財源は歳出カットと組み合わせ後半で取り戻すという諮問会議の基本戦略を示したが、石氏は過去の経験からも税制改革に工程表という考えが難しいこと、長期的には税の歪みを解消する過程で増収を視野に入れる議論に政府税調はならざるを得ない、と語った。ただ、石氏は短期的なデフレ対策での政策減税を否定はせずその際は本当に景気に役に立つものか、さらに財源のめどの条件を求めた。


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 マスコミ報道で対立が指摘される政府税調の石弘光会長と経済財政諮問会議議員の本間正明氏が、混迷する税制改革論議での一致点を探るため言論NPO で対談した。日本は今、何のための税制改革を考えなくてはならないのか。当面のデフレ対策だけではなく戦略的に税制改革