日本評価学会 報告

2009年11月29日

日本評価学会
 11月29日、明治大学にて日本評価学会の全国大会が開催され、「政権交代とマニフェスト評価~政治主導体制下の政権評価のあり方を考える」をテーマとしたディスカッションに、言論NPO代表の工藤泰志が参加しました。

 ここでは、言論NPOの監事の田中弥生氏(大学評価・学位授与機構准教授)が座長を務め、工藤のほかに中林美恵子氏(民主党衆議院議員)、新井誠一氏(総務省行政評価局総務課企画官)と、言論NPO理事でもある高橋進氏(日本総研副理事長)が参加して議論が行われました。

田中弥生氏 まず田中氏より、「現在の政策評価システムでは、政治と有権者をつなぐマニフェスト政治の仕組みは実現できないのではないか」との問題提起がありました。そのうえで田中氏は、言論NPOのマニフェスト評価活動に携わった経験から、現行の制度では内閣や内閣官房に事務局をおく政策は評価の対象にならないことや、経済財政諮問会議など政治側が評価の結果を無視するといった事例もかつて見られたことを挙げ、「省庁の中に閉じてしまっている日本の政策評価を、国民に開かれたかたちに設計し直す必要がある」と述べました。

中林美恵子氏/高橋進氏  続いて中林氏が、アメリカ上院や日本の省庁で政策評価などに携わった経験をもとに発言しました。大統領制という制度の違いもあり、アメリカでは政策決定プロセスの透明性がある程度確保されている一方で、日本では政策評価が政治家やその先の有権者につながっていないとし、「日本の制度に根差した評価のシステムを作ることが私の責任だと思う」と述べました。また、先日まで行われていた行政刷新会議の「事業仕分け」に仕分け人として参加していた高橋氏は、「仕分け」の長所や短所を挙げつつ、「議論が全て公開され、役所に説明責任が移ったことで族議員が裏で画策することもできなくなるなど、ゲームのルールが変わったことは評価できる」などと述べました。新井氏は総務省の行政評価局の概要と機能を説明し、「政策評価を予算・決算につなげることと、政策の体系性や客観性の確保が重要だと思う」と述べました。
工藤泰志 こうした発言を受けて工藤は、民主党内の政策形成におけるガバナンスの仕組みが整っていないことを指摘したうえで、選挙での約束を政府の約束に発展させることの必要性を強調し、「選挙でのマニフェストを政府の約束に変え、それを予算に連動させるというというマニフェストのサイクルが、日本ではまだ始まっていない」と述べました。そして、「政党のマニフェストをどう政府の約束に変えるのか、その実行プロセスを自己評価する仕組みを日本でどう設計するのか」という2つの課題を挙げました。


091129_02.jpg その後のディスカッションでは、日本では立法府の政策立案や評価の機能が極めて弱いことや、代案を提案したり政治的な判断に踏む込むことができない「事業仕分け」の限界などについて議論が行われました。政策評価については、衆参両議院の機能分担のあり方や、複数の省にまたがる評価の難しさなども挙げられ、終了時間いっぱいまで活発な議論が行われました。最後に工藤が「市民が強くならないと政治は変わらない」と述べ、責任ある市民が議論に参加し、政治を選ぶようなしくみの必要性を訴えました。

文責: インターン 水口 智(東京大学)

 11月29日、明治大学にて日本評価学会の全国大会が開催され、「政権交代とマニフェスト評価~政治主導体制下の政権評価のあり方を考える」をテーマとしたディスカッションに、言論NPO代表の工藤泰志が参加しました。