【国と地方】 穂坂邦夫氏 第8話:「パブリックな領域とは」

2006年6月03日

穂坂邦夫氏穂坂邦夫(前志木市長、地方自立政策研究所代表 )
ほさか・くにお
profile
1941年埼玉県生まれ。埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木市)職員を経て、志木市議会議長、埼玉県議会議長を歴任。2001年7月、志木市長に就任。2005年7月から地方自立政策研究所代表

「パブリックな領域とは」

 市長をやっていたときには、私はシティ・マネジャーで住民のみなさんはオーナーですと言っていました。お金がなくなったら、行政サービスを削減するか、値上げをするか、行革をするか。その3つしかないのです。現在の状況説明と3つのうち、どれを選ぶかということについて、私は住民との対話を36回もやりました。住民との協働推進条例を作り、行政パートナーシップ制度を入れたわけです。

 その目的の一つは、行政と市民の一体化をしよう、自立的な市民を育てようということでした。行政の仕事のうち、これは住民が本来やるべきで、行政はやりすぎだという部分については止めてしまう。もう一つは、この業務は必要だが、本当に公務員でなければできないのか、民の人でもできるのではないかという分け方です。

 志木市では、半分は、住民の皆さんでもできるということになりました。そのうちの半分をみると、法律によって公務員ではなくてはだめだと書いてある。社会教育法の何条により・・・という規定です。

 これらの法律をなくしてしまえば住民がやっても大丈夫かどうか検討させたところ、「住民のプライバシーも守れるし、大丈夫です」というのが数多くでてきました。私も役人でしたから分かりますが、公務員でなければならない仕事はせいぜい1割か1割5分だと思ったわけです。

 つまり、必要だけれども公務員でなくてもできるという仕事を住民やNPOなどの民間に出してしまえば、行政は15%にまで小さくして、小さな政府でができる。ただ、検討する場合にはあくまで、実務的でなければなりません。志木市では細かい業務まで含めて1500ありました。それを、一つ一つ、職員同士が集まって、これは公務員でなければだめなのかということを検討した。業務の棚卸しです。重大なプライバシーに関することは民間には出せませんね。しかし、考えてみたら、どちらの漏洩が多いかといえば、統計的には役所の方が多い。しかし守秘義務は民間にはありませんから。

 行政に残すべき機能を絞り込むと、政策立案、政策調整、人事管理機能ということになりました。加えて、公権力が直接及ぶものもそうです。例えば市町村には「境界査定」という仕事があり、これは土地の境界です。測量屋がやりますが、職員が立ち会わなくてはならない。ですから、公権力を直接的に行使する業務や危険度の高い仕事、教育については除外をするべきです。また市民の重大なプライバシーを保護しなければならないものは公務員ですが、その程度に限られます。

 しかし、民の受け持つべきパブリックな領域というのは、非常に複雑に絡み合っています。地域の個性、特性に応じて進めていくべきです。財源のあるところは全て行政でやってもいいのです。それは住民の意思だと思います。

 私たちの行政パートナー制度では、業務を担って戴く住民団体やNPOとパートナーシップ協定を結んだり、共同業務評価委員会をつくって、市民が市民の業務を評価し、それを公表するといったこともやりました。パートナーシップ協定により市長は業務を受託する市民やNPOの意見を尊重する義務があって、もし提案を受け入れない場合には説明責任がある、というところまでやりました。

 ただし、NPOを育成するためのお金は一銭も出さない、NPOの基本である自立をどちらも考えなければならないのではないでしょうか。今のNPOは、どうも官依存、行政依存になっているのではないでしょうか。そこにも課題があると思っています。


※本テーマにおける穂坂邦夫さんの発言は以上です。
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※次回6/5(月)の発言者は本間正明 氏です。引きつづきご期待ください。
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 市長をやっていたときには、私はシティ・マネジャーで住民のみなさんはオーナーですと言っていました。お金がなくなったら、行政サービスを削減するか、値上げをするか、行革をするか。その3つしかないのです。現在の状況説明と3つのうち、どれを選ぶかということについて、私は住民との