【国と地方】 本間正明氏 第2話: 「第二ステージの改革はどう組み立てるか」

2006年6月07日

honma.jpg本間正明(大阪大学大学院経済学研究科教授・経済財政諮問会議議員)
ほんま・まさあき
profile
1967年大阪大学経済学部卒。73年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。英国ウォーリック大学客員教授、ロンドン大学STICERD客員研究員、大阪大学副学長などを経て、現在大阪大学大学院経済学研究科教授。経済財政諮問会議議員、税制調査会委員などを兼任。主著に「租税の経済理論」「新・日本型経済システム」等。

第二ステージの改革はどう組み立てるか

 これまでの三位一体改革は、国と地方の間の権限や財源の振り替えという形での議論でした。これを再スタートするに当たり、私たちは日本が抱えているもうひとつの大きな問題を整理しながら、国と地方の関係の第2ステージの改革をどのように進めていくかということについて、考えなくてはならなくなっています。

 より大きな問題というのは国と地方を合わせた財政のいわば極めて危機的な状況です。プライマリーバランスを2011年に黒字化していく、あるいは 2015年以降はGDPに対する債務残高の比率を下げていくというマクロ経済的な課題がもはや待ったなしの状況で問われています。
こうしたマクロ上の課題を次の改革ではステップで考慮に入れながら、改革を組み立てなくてはならないわけです。

 現在の6月の「骨太の方針」のとりまとめに向けた議論では、2001年にスタートした小泉内閣の中で、国と地方がプライマリーバランスの改善ではどちらが努力したのかということが一つの大きなポイントになっています。この考え方を整理した上で、では、次の2006年から2011年にかけてのシェアというものをどういう具合に両者が担っていくのか。そこでは、地方自治の確立という質的な問題と、財政的な量の問題がセットになっています。

 今、2006年の出発点では、国と地方を合わせたプライマリーバランスの対GDP比率は2.8%程度の赤字なのですが、地方については既に黒字になっています。ですから、その赤字はほぼ国が担う形になっています。国と地方の間での交付税や補助金などの配分後の、調整後の姿では、地方の方が黒字化をして、国の方が赤字になっています。

 従って、これを放置したままにすれば、地方の方が黒字化の幅がどんどん広がり、国の方は依然として赤字が続きます。これは内閣府の一つのシミュレーションなのですが、2011年の段階で、地方が1.4%の黒字で、国が1.4%のマイナスで、ちょうど収支均衡するという状況が出てきます。
それをどのようにして、国と地方が協力しながら、全体でプライマリーバランスしても地方の黒字幅を減らし、国の赤字を小さくするのか、それについての制度改革を含めた議論をしなければいけない状況になっています。

 ところが、今までの議論のやり方では、地方の側からは、自分たちは結構一生懸命やってきたのに、なぜ国のために我々が犠牲をこうむらなくてはいけないのかという主張が出てくる。しかも、90年代に、国が公共事業をやれといって、それをやらされて、そのツケが地方債の累増になっており、それも解決できないのに、あるいは、地方が交付税特会から借入れをして、まだそれがクリアされていないのに、なぜ地方が国に協力しなければいけないのかという議論があります。

 一方で国の方は、地方が改善をしているのだから応分の協力をしてくれなくては困るということになります。地方の方が債務残高が減少していくテンポが速く、国の方はまだまだ累増していく、2011年以降もそのような構図になります。それでは持続可能な財政という点で将来に禍根を残すということで、国も地方も両者の債務残高比率が減少するような形で、発散型ではない収束型の財政構造をつくっていく必要性があるということになります。

 内閣府や我々民間議員は、その間に立っています。現在の試算では、2011年以降、国と地方のトータルで2%程度の黒字となり、いずれ、国と地方の債務残高は減ってくることになるのですが、地方が黒字化をして、国も黒字化をするということになると、トータルで4~5%のプライマリー黒字を国民に求めていかざるを得ない。これは、マクロ経済的にも非常に大きな数字です。しかも大きな政府を助長してしまいます。

 諮問会議でも、財務大臣と総務大臣の間で、あるいは、そこに取り巻く民間議員が色々な議論をして、私も竹中大臣からガンガン言われるという状況になっています。そこで総務省側も竹中大臣がイニシアティブを取られて、大田弘子座長の下で地方の21世紀ビジョンを今後作り、この問題にどう解決の方向性を見出すのか、そして竹中プランとして出していただいて、最終的には、6月の歳出・歳入一体改革及び2006年度の基本方針に、それをどう織り込むかということで議論を今、詰めているところなのです。


※第3話は6/9(金)に掲載します。

これまでの三位一体改革は、国と地方の間の権限や財源の振り替えという形での議論でした。これを再スタートするに当たり、私たちは日本が抱えているもうひとつの大きな問題を整理しながら、国と地方の関係の第2ステージの改革をどのように進めていくかということについて...