【国と地方】斉藤惇氏 第6話:「地方活性化のトータルデザイン(2)」

2006年5月12日

saito.jpg斉藤惇 (株式会社産業再生機構代表取締役社長)
さいとう・あつし
profile
1939年生まれ。63年慶應義塾大学商学部卒業後、野村證券株式会社入社。同社副社長、スミセイ投資顧問顧問を経て、99年住友ライフ・インベストメント社長兼CEOに就任。2003年より現職。主な著書に『兜町からウォール街─汗と涙のグローバリゼーション』 『夢を託す』等。

地方活性化のトータルデザイン(2)

 私どもがダイエーの店を1つ撤退させるにも閉鎖するな、置いてくれの大合唱でした。都市型大型店が閉鎖するというのは地元にとって大チャンスのはずですが、これがなくなると、町が寂れると言う。持っていかれることへの抵抗感だけで、それを利用して何とか新しい町をつくろうというリーダーシップをとる人がほとんどいません。

 現状は、きちんとした分析もできないままに、地方はパッチングワーク的に対応しているという状況です。例えば大店舗が出てくるときに県庁は許可しましたが、それは若者の失業がカバーできる、あるいは東京や大阪へ行く若者をとめられると思ったからでした。そこのところだけを見ていたら、結果的に市の真ん中が過疎化するという現象にぶつかって批判を浴び、これは経済原則では動かせないので、今度は法律をいじって大型店舗の進出をコントロールしようとした。それが先の街づくり3法の基本的な発想です。

 私はよく九州の人と話をしましたが、そこでもいろいろ考えさせられることがありました。熊本では皆さんが新幹線を整備すべきと言っていましたが、新幹線が通れば20分で福岡まで行きますから、熊本でショッピングしません。それなのに、新幹線が止るだけの熊本駅の周りに大きなショッピング街をつくろうとして、大金を入れています。

 わざわざ新幹線で鹿児島から来た人が降りてそこでショッピングするはずもなく、福岡から来るはずがない。しかしながら、青年会議所や商工会議所が中心に、県庁も一生懸命、その対応をやっています。実に無駄金だということがわかっていてもやる。きちんとしたデザイナーがいないのです。

 人口減少をカバーする方法は結局、1単位当たりの生産性や消費、すなわち、すべて1単位当たりで上げていくしかありません。絶対量はもう期待できないのですから。そうすると、人が減ってきた地方では、1人当たりの収入や1人当たりの消費量がものすごく上がるようなシステムを考えなければいけないはずなのです。


※第7話は5/14(日)に掲載します。

私どもがダイエーの店を1つ撤退させるにも閉鎖するな、置いてくれの大合唱でした。都市型大型店が閉鎖するというのは地元にとって大チャンスのはずですが、これがなくなると、町が寂れると言う。持っていかれることへの抵抗感だけで、それを利用して何とか新しい町を...