言論スタジオ

「政治の崩壊」を有権者はどう直視すべきか

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2011年6月2(木)収録
出演者:
増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問)
宮内義彦氏(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEO)
武藤敏郎氏(株式会社大和総研理事長)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


 6月2日、都内にて、言論NPOの第三回アドバイザリー・ボード会議が開催されました。今回は代表工藤のほか、増田寛也氏(株式会社野村総合研究所顧問)、宮内義彦氏(オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEO)、武藤敏郎氏(株式会社大和総研理事長)が参加しました。

首相の不信任を巡る混迷をどう受け止めるか、

工藤:今回、不信任案を提出したという動きについては、肯定的に捉えるべきなのでしょうか。つまり、今の話を伺っていると、政治そのものが破綻していて、政党も機能しない、統治が壊れているところまできていたわけですね。だけど、依然、課題はある。それに対して、十分に政治が応えられないという状況が、今、現実にあるわけですね。

 政治がどんなにおかしくても、今は、被災地が大変だから、みんなで力を合わせてやれ、というのは何となくわかるのだけど、しかし、それが課題解決に向かい合えなければ、結果として、歪みが大きなものになる。そうすると、今回の不信任という問題は今後の日本の再生を考えたときに、どういう風なものだと受け止めなければいけないのか、ということですが、増田さん、どうでしょうか。

増田:この不信任ということについて、一定の政治上のルールがあって、不信任案を提出するにあたって、それが通るということを前提にした場合に、その後、一体どういう姿になるかということを、国民あるいは国政の場できちんと示して、不信任案を出す。いわゆる、大義ですよね。どういう首班構成をして、どういう政党がそれを支え、どういう社会、どういう世の中の改革をしていくのか。こういうことがあって初めて不信任案だと思うのですが、今回、それが示せたのかどうか。野党としての提出の力も弱いと思います。

 一方で、もっと更に情けないのは、それを受けて立つ与党・民主党です。そもそも綱領もない党でありましたが、党の代表が党を全く制御しきれていなくて、これまでの間やってきたことと言えば、政権を延命するための場当たり的な対応。二次補正も秋にすると言ったり、あるいは急に会期を延長して、通年国会にすると言ったり、全て、自らの政権の延命策という願望というか、野望みたいなものが見え隠れするわけです。そういう代表を、こういう形で、野党が提出した不信任案に乗るという形でしか、自らの党を改革するというか、自らの党を正すことができない党員、議員を中に抱えているという党が与党である。

 私は不信任案を出すタイミングではないと思いますが、しかし、結果として出たわけです。それについての基本的な政治で守るべきルールも守れていないという風に思います。ですから、今回の不信任案や今の事態については、大変否定的です。もっと大きな問題は、(衆議院の一票の格差が司法から指摘される中で)総理たるものが、そういった形で司法に挑戦するかのごとく、不信任案が可決したら解散だと言ったことです。こういうこと自体がおかしいし、立法府の1つである参議院の議長が行政府のトップに対して、諦めろとかどうのこうのと、元は同じ党の人が言うこと自体、極めて異例でおかしい。ですから、全てが崩れている。

工藤:今までの話を聞いていると、単なる不信任案ではなくて、政党も含めて、日本の政治そのものが壊れてしまっているということですね。

増田:原発でメルトダウンという言葉が使われていますが、まさに政治のメルトダウン。

工藤:私は、そこまで日本の政治が来ているという現実感を国民は知らないと、前に進まない段階にきているのではないか、という感じがしています。宮内さん、今回の不信任の問題について、正当化できると思いますか。

宮内:やはり、日本の統治機構の問題がかなり絡んでいると思っています。衆議院と参議院という二院があって、時期の違う時に、国民に対して(選挙という形で)支持率調査をやっているようなものです。2年前、自民党が衆院選で大敗した時は、自民党に対して、国民はもう嫌だという強烈なノーを示したわけです。その1年後の参院選では、民主党の政治はひどいということで、完全に国民はノーをつきつけたわけです。そして、参議院で与野党が逆転してしまった。衆院選での支持率調査は少し古く、参院選の調査の方が新しいので、だから総理を辞めなさいというのは、何となく分かるような気もするけれど、変だなと。そういう二院制度、同じ政党が同じサポーターを求めて、同じ選挙をするという形の中で、変なことが起こってきているのだと思います。

 そういう意味で、野党が不信任案を出すことは当たり前かもしれません。しかし、今の与党は、政権与党としての与党ではないのですね。先程も言いましたけど、烏合の衆です。だから、政権政党ではなかったということです。

工藤:民主主義の下では、政治家は国民の代表として機能しなければいけないのに、その関係がプツンと切れているわけですよね。つまり、代表だと思っていた党も実質的には分裂し、烏合の衆だったし、政治も崩れている。この状況を、つまり、今は震災で大変だから、黙って見て見ぬ振りをしていくということで大丈夫なのでしょうか。

宮内:昔であれば、若い人がデモでもしますよ。日本の若者がどれだけ気力を無くしているかということですね。

武藤:今回の不信任案の議論は、現状を前提とすると、どっちがいいとか悪いとかいう問題ではないと思います。なぜこれだけ混迷しているかと言えば、先程から何度も話が出ているように、民主党が政党として体をなしていないわけですね。それは、ある意味で、出自から見ても、党の中には右から左までいろいろいて、とても1つの政策を標榜しているとは思えないわけです。今回のマニフェストも一部の人が十分な議論がないままつくったのではないか、と言われています。うまくいかなければ変えるという人もいるし、変えてはいけないという人が出てくるのも、元々の民主党の出発点から見ても、ごく自然な結論なのかもしれません。そういう中で、たまたま大震災が起こって、その対応が悪かったということで、不信任ということになったときに、色々な意見があって与党の方がまとまらないという状態になっているわけです。

 問題は、国民が右から左までいる民主党を冷静に評価して、これが正しい政党かどうかということは、無理な話だということです。本当の意味では、投票の対象にならないような政党だと言わざるを得ないわけですね。今回の不信任案がそういう中でどう見ても100%合理的だとはとても言えない。しかし、全く不合理とも言えない。何か打開しないといけないということです。

 先程お話がありましたけど、総理を変えようと言っても、新しい総理は誰なのか、という部分についてははっきりしていないわけです。ですから、この不信任案が新たな大連立になるとか、そういう形で新しい展開に結びつけば、それはいいと思うし、新たな混乱になるとすれば、この不信任案はあまり時宜を得ていなかったと、つまり結果によって評価するしかないと思います。

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