言論スタジオ

2015年の日本に何が問われているのか

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2015年2月10日(火)
出演者:
明石康(国際文化会館理事長)
川口順子(明治大学国際総合研究所特任教授)
宮本雄二(宮本アジア研究所代表)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)


議論で使用したアンケートはこちら

 2月10日、2015年最初の言論スタジオが放送されました。言論NPOのアドバイザリーボードでもある宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表、元中国大使)、川口順子氏(明治大学国際総合研究所特任教授、元外務大臣)をゲストにお迎えし、さらに、明石康氏(国際文化会館理事長)にはインタビュー収録という形でご参加いただき、「2015年の日本に何が問われているのか」をテーマに活発な議論が行われました。


日本にとって非常に重要な1年になるとの見解で3人の意見が一致

工藤泰志 まず冒頭で、新年を機に「2015年の日本を考える」と題して、有識者を対象に行われたアンケート調査を基に、司会の工藤が「今年が日本にとってどのような年になるのか」と尋ねたところ、3氏はいずれも「2015年は日本にとって非常に重要な1年になる」との見解を示しました。宮本氏は、日本をとりまく大きな構造変化を踏まえた上で、その変化に対応していくためには、「経済がしっかりしていることが重要」と述べ、アベノミクスの成否が2015年のポイントになると述べました。川口氏も同様にアベノミクスを重視した上で、「一人ひとりの日本人が、今年は日本にとっての正念場だという危機感を持ち、今年を乗り切るために自分に何ができるのか考えるべき」と提唱しました。明石氏は、戦後70年間の日本の歩みに言及しながら、「70年という時点で日本が何を考えているのかを明確に発信するだけでなく、それに『血と肉』を与えていかなければならない」と訴え、アジア諸国との友好関係、アメリカとの同盟関係を血と肉の入ったものにするために、今年は「信頼感に基づいた未来を築けるかどうかの節目の年」になると語りました。

宮本雄二氏 続いて、デモクラシーの課題について議論が移ると、宮本氏がアメリカの事例を紹介しながら「自分の利益だけを追求するのではなく、社会全体の利益を考えながら決めていくという『公の意識』を伴うデモクラシーこそが求められている」と訴えました。川口氏もそれに同意しつつ、フランスのテロ事件の際に、危険があるにもかかわらず、大群衆がデモに参加したことを紹介し、「民主主義にはそうした『強さ』も求められる、ということを今年は再認識していく必要がある」と語りました。

 「安倍政権の2015年」については、宮本氏は期待を寄せつつも、「抱えている課題は今後何十年にも渡る日本の課題である」として、大きな困難が待ち受けていると予測しました。川口氏も同様の見解を示し、今年は「安倍政権の真価を超えて、日本の真価が問われている」と述べつつ、「リーダーシップを発揮して問題解決にあたっていく」と安倍政権に対する期待を寄せました。

 「2015年の日本の社会や政治の課題」については、アンケートでは財政再建や社会保障改革を挙げる有識者が多く見られましたが、宮本氏は「日本を取り巻く世界の大きな構造変化、例えば、中国が地政学的にアメリカの地位の挑戦していること」に対して大きな懸念を表明しました。さらに、アンケートで民主党代表選に対する関心を示す有識者がわずかであったことを踏まえ、「民主党に対する失望が日本の政治に対する失望につながってはいけない。政治を見捨てず、むしろ国民の方から発信し、政治に対する注文を付け続けていくべきである」と主張しました。
 
 川口氏は、「財政再建や社会保障改革は確かに重要だが、アベノミクスの第3の矢が成功すれば、この2つの課題についてもおのずと展望が開けてくる。その優先順位を間違えてはいけない」と語りました。


改めて問われ始めた「国家」という問題

 「2015年の世界の課題」については、アンケートでは「テロ問題」に有識者の関心が集中しました。宮本氏は「これも世界の構造的な変化の問題の1つである」と述べ、さらに「19世紀に民族と国家を1つに結びつけて「国家」という単位で国際社会を構成しようという流れができたが、現在、国家そのものを形成できないところが出てきた。つまり、従来の延長線上で国家を構成してきた枠組みが根本的に問われ始めている。今、改めて『国家』というものが、問われ始めている」と問題提起をしました。

川口順子氏 川口氏もこれを受けて、「本来国家が与えるべきガバナンスを与えておらず、国民が裏切られた、と感じていることが背景にある」と指摘。さらに現在、ヨーロッパでは、反EU主義が起こっていることに言及し、「国家を超えるガバナンスについても、不信感が募ってきている」と述べ、続けて「これまで平和と安定をもたらしてきた戦後体制が、現在の問題に十分に応えられているか再び問い直さなければいけない時期に来ている」と主張しました。

明石康氏 明石氏はこのテロと国家のガバナンスの問題について、自身の国連在籍時における経験も踏まえながら語りました。その中で明石氏は、「国連も今までのようなPKO活動では、中東とアフリカに関してはとてもやっていけない。国家と国家の機能を果たしえないような破綻国家、不安定な国家がもう20前後も出現している。こうした状況で国連はどのような新しいやり方で対応していくのか。PKOも今までの小型武器では対応できなくなっているが、国連の限界をきちんとわきまえながら、必要最小限の力で何とか解決しなくてはいけない状況である」と語りました。
 さらに明石氏は、北東アジアに関する問題として、朝鮮半島の38度線による分断や中国・台湾問題など、「冷戦時代のマイナスの遺産」が多いことを指摘し、この地域にも危機はあると訴えました。その上で明石氏は、「中国や韓国、東南アジア、そしてアメリカでさえも安倍首相の戦後70年談話で示してほしいスタンスというものがある。それに沿えるような歴史的にプラスになるようなもの、日本人が誇りにするだけではなくて世界にとってより望ましいものを打ち出せるかどうか」が、冒頭で述べた「より平和でより相互信頼に基づいた世界を築く」ためのポイントである述べ、改めてこの2015年が正念場の1年になることを強調しました。


私たち有権者、国民に問われていることは何か

 最後に、「2015年、私たち自身には何が問われているのか」というテーマで議論が行われました。宮本氏は、「政治にも変わってほしいが、国民レベルでも変わる必要がある。政治をすべて政治家にお任せすするのではなく、自分の身の回りで社会をよくするために何かできることを探してもらいたい」と視聴者に語りかけました。

 川口氏は、アンケートの回答者属性で30代までの若い世代が10%もないことを指摘しつつ、「日本の若い人は投票率も低いし、社会に貢献というか動かすことに関心を持つ人が少ないことについて我々は危機感を持つべき。同時に若い人であっても世の中で発言権を持ったり、仕事の場で活躍できたりする仕組みが必要」と主張しました。

 明石氏は、「有権者は日本人であるだけではなくて、アジアの人間であり、世界の一員である。まさにグローバルな視点から、本当の意味での和解を私たちは築くことができるかどうかの境目に立たされている。単なるナショナリズムの衝突ではなくて、それを私たちが超えることができるかどうかが本当に問われているが、それは一人ひとりの決意と覚悟にかかっている」と訴えました。


 議論の最後に工藤は、「間違いなく今年は日本が真価を問われる一年になるが、言論NPO自身も問われることになる。議論を大切にしていきながら、課題解決のための仕組みを作るために具体的な行動に移していく」と決意を述べ、2015年最初の言論スタジオを締めくくりました。



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