言論スタジオ

【緊急座談会】焦点はこの談話をどう実行するか ―戦後70年の重みを再確認せざるを得なかった―

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2015年8月25日(火)
出演者:
神保謙(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
高原明生(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
山田孝男(毎日新聞政治部特別編集委員)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)



 8月19日、言論スタジオでは、神保謙氏(慶應義塾大学総合政策学部准教授)、東京大学大学院法学政治学研究科教授で、新日中友好21世紀委員会の日本側委員も務める高原明生氏、安倍談話に関する有識者会議「21世紀構想懇談会」のメンバーである山田孝男氏(毎日新聞政治部特別編集委員)の各氏をお迎えして、「安倍談話」に関する緊急座談会を行いました。議論では、3氏から、「戦後70年」の重みを再確認した安倍首相が、方針を転換しつつも、戦略的に打ち出してきた談話に一定の評価を示す声が上がるとともに、これから談話内容をどう実行していくか、が焦点との意見が相次ぎました。


姿勢を変化させた安倍首相

工藤泰志 緊急座談会では、司会を務めた言論NPO代表の工藤が、今回の安倍談話についての率直な感想を尋ねると、各氏からは事前に懸念されていたような内容ではなかった、との肯定的な評価が出されました。


 まず、高原氏は、「主語が明確ではないなどのマイナス点はあるものの、(「植民地支配」「侵略」「反省」「お詫び」という)4つのキーワードは盛り込まれており、大きな違和感のない内容だ。全体としては予想以上」と述べました。


 山田氏も、「文章が長いなどの問題はあるが、懸念されていたような過激な表現は見られず、『21世紀構想懇談会』の報告書の内容も概ね踏まえられている」と一定の評価をしました。


 これを受けて神保氏は、仮にこの談話が2012年12月の政権発足直後に出されていたとしたら、もっと周辺国を刺激するような過激な内容になっていたのではないか、と前置きした上で、談話が抑制的なトーンに落ち着いた背景には、「昨年7月の豪州議会や、今年4月のバンドン会議及びアメリカ議会において演説を行い、さらには、『21世紀構想懇談会』での議論を経て、歴史に対して謙虚に向かい合うようになっていった」と安倍首相の姿勢の変化を指摘しました。神保氏は、その変化の背景として、「談話の検討過程において、様々な規範が根付いた戦後70年の重みを再確認せざるを得なかった」ことや、「靖国神社参拝時に諸外国からの批判が想定以上に大きかった」ことを挙げました。


明確な意図を持って出された安倍談話

 そして、談話の目的について議論が移ると、諸外国からの批判に押されてやむを得ずに抑制的なトーンになったのではなく、安倍首相が明確な意図を盛り込んでいるとの指摘が相次ぎました。

 まず、山田氏は、「日本国内では、戦前・戦中の日本について、『全部悪い』という見方と、『全く悪くない』という見方の両極端に分かれている。その中間を示す必要があったのではないか。その中で、安倍首相は色々な事情を加味しながら自分なりのロジックを形成していった」と解説しました。

 神保氏は、中国が反ファシスト戦争の勝利を喧伝し、多くの国を自陣に引き込もうとする中では、それに対して正面から対抗するよりも、「かつては国際的な価値秩序に対する挑戦者だった日本が、戦後の70年間で、法の支配、民主主義といった普遍的価値を自分の血肉にした。そして、今後もその価値を守っていく、ということを安倍談話でアピールすることにより、これらの価値を共有する国々を味方につけることができるし、中国も反論できなくなる」と、談話が持つ積極的な意図について語りました。


安倍談話から、中韓両国との関係改善につなげていくためには

 次に、工藤が、「安倍談話に対して、事前にはあれほど厳しく見つめていた中国、韓国両政府も一定の理解を示しているような印象を受ける。ハードルを下げたのはなぜか。そして、この談話をどのように活かしていくべきか」と問いかけました。

 これに対し高原氏は、「(韓国の朴槿恵大統領が「物足りない部分もある」と言ったように)100点満点の談話ではないものの、関係後退を余儀なくさせるようなものでもない。両国政府もホッとしているというのが本音だろう」との見方を示しました。高原氏はその上で、「談話を出して終わりではない。これから首脳会談など安倍首相は自らの考えについて相手に説明する機会は多いはず。足りない部分はそこで補足するなど、フォローアップをしていくことが重要だ」と指摘しました。

 神保氏は、対韓関係については、慰安婦問題で政治決断ができるか、など難しい対応が迫られるため、厳しい見通しを示した一方で、対中関係に関しては、2度の首脳会談や、自民党・二階俊博総務会長率いる3000人訪中団を中国側が歓迎したこと、さらに、習近平国家主席の9月訪米を控えた中国側にとっても、日中関係の安定は重要課題であることなどを指摘した上で、「日中関係は上昇機運にあるので、この機を逃すべきではない」と語りました。


「第11回東京-北京フォーラム」では、日本の姿を言論によってわかりやすく示すべき

 最後に、アジアの平和と安定実現に向けた民間の役割、とりわけ「第11回東京―北京フォーラム」で議論すべきことについて話題が及ぶと、民間レベルでも日本の立場をしっかりと説明することの重要性に関する指摘が相次ぎました。

 神保氏が、中国では安保法制が日本からの挑発と受け取られていることを踏まえつつ、「政策の目的について説明し、(軍国主義的ではない)日本の姿を言論によって明確に示すべき」と述べると、山田氏も「中国は『日本は何をするか分からない』という疑念を抱いているので、それを払拭すべき」と応じました。

 他方、高原氏は両氏と同様の見解を示しつつ、さらに、安倍談話が戦後70年の交流や協力の歴史についてあまり触れられていないことを指摘した上で、「こういった成功の歴史について、忘れないように呼びかけることも大事だ」と主張しました。

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