言論外交の挑戦

有識者103人が見た「北東アジアの平和」の現状と将来像

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言論スタジオ「北東アジアの平和的な秩序構成と日本の役割」


 言論NPOでは、2016年2月より、「世界の平和的な秩序」の立て直しに挑む議論を開始し、その中でもまず、北東アジアの平和秩序について取り上げます。そこで、この地域の平和環境をめぐる現状や将来の姿について、有識者の見解を探り、今後の議論づくりに役立てるため、言論NPOに参加する有識者の皆様にアンケートを実施し、103人から回答を得ました。

 その結果、約8割もの有識者がこの地域の平和的秩序の現状を「不安定だ」と見ており、北東アジアで10年以内に紛争が「起こる」と予測する有識者も3割を超えました。また、10年後の北東アジアの姿についても「台頭した中国の影響がより強まり、不安定な状況が続く」との回答が多数を占めました。

 一方、北東アジアの平和的秩序を維持するために何が必要になるかを尋ねたところ、「パワーバランスの維持」が45.9%で最も多く、「様々な課題に対する政府間協力の構築」が41.8%で続くという結果になりました。


調査の概要

 言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2016年1月28日の1日間でメールの送付によって行われ、103人から回答を得ました。

 回答者の属性は、以下のようになっています。


1. 北東アジアの平和環境をめぐる現状認識

約8割の有識者が、北東アジアの平和的秩序の現状を「不安定」と見ている

 現在の北東アジアの平和的秩序がどのような状況にあると思うか尋ねたところ、80.6%の有識者が「不安定である」と回答しました。「安定している」という回答は6.8%にとどまり、「どちらともいえない」は11.7%でした。

【現在の北東アジアの平和的秩序は安定しているか】


北東アジアの平和をめぐり、「中国の軍事力増大」に75.7%が関心

 次に、北東アジアの安全保障と平和的秩序を考えたときにどのような問題に関心があるかを、以下の選択肢からいくつでも選んでもらいました。その結果、「中国の軍事力の増大と海洋における活発な活動」が75.7%、「北朝鮮の核・ミサイル開発」が72.8%で、いずれも7割を超える有識者が関心を示し、「南沙諸島問題」(59.2%)、「中国の経済状況」と「中国の国内統治」が51.5%で続きました。軍事・経済の両面で急速に台頭してきた中国の動向が、この地域の平和的秩序にとって重要な要素であると考える有識者が多いことが分かりました。

【北東アジアの安全保障と平和的秩序をめぐって関心のある問題】

「その他」の記述回答

  • 米軍の北東アジア安全保障への関与の功罪(男、50代、企業経営者・幹部)
  • アメリカの対中姿勢(男、30代、NPO・NGO関係者)
  • 中米関係の今後の展開(男、70代)
  • 米国の影響力の推移(男、50代、メディア関係者)
  • 中国とロシアの関係(男、60代、学者・研究者)


2.北東アジアにおける紛争の可能性

3割強の有識者が、北東アジアで10年以内に紛争が起こると予測

 北東アジアで10年以内に紛争が起こると思うかを質問したところ、「どちらともいえない」で38.8%と最も多い回答となりました。一方、「そう思う」との回答は33.0%となり、、「そう思わない」の23.3%を上回りました。

 「そう思う」と回答した人に、紛争が起こると思う具体的な地域をいくつでも挙げてもらったところ、76.1%が「朝鮮半島」、67.4%が「南シナ海」と回答しました。

【北東アジアで10年以内に紛争は起きるか】

「そう思う」と回答した方にの記述回答

  • ロシア、中国、北朝鮮による紛争。特に、ロシアの進攻を予感する(男、50代、メディア関係者)
【紛争が起こると思う地域】


3.10年後の朝鮮半島

10年後は「北朝鮮の現体制が崩壊する」との見方が4割

 10年後の朝鮮半島がどうなっているか尋ねたところ、「北朝鮮の現体制が崩壊する」(40.8%)との回答が最も多く、次いで「現状のまま」と「予想できない」がそれぞれ約2割、「南北統一に向けた動きが始まる」と「韓国と北朝鮮の対立が激化する」はそれぞれ1割未満という結果でした。

「その他」の記述回答

  • パククネ大統領後の大統領による。(男、10代、学生)
  • 北と南は、大国の利権のなかで微妙なつり合いとなっているように見えます。中国とアメリカは裏での取引話は存在すると思いますが、弱みに付け込むロシアが恐いです。(男、50代、自営業)


4.10年後の北東アジア

10年後の北東アジアは「中国の影響がより強まり、不安定に」との予測が過半数

 続いて、10年後の北東アジアをどのようにイメージしているか、と尋ねたところ、「台頭した中国の影響がより強まり、不安定な状況が続いている」との回答が54.2%となり、唯一過半数に達しました。次に多いのは「朝鮮半島や領土などをめぐる紛争が勃発している」の31.1%でした。

 一方、「平和的秩序形成に向けて、政府間の動きは鈍いものの民間レベルでは活発な動きが始まる」は25.2%、「北東アジア各国が協調して新しい平和的な秩序を形成しようとしている」は13.6%となり、平和的な秩序に向けた動きが前進しているという予測も一定程度存在するものの、不安定な状態が続くか、一層深刻化しているという悲観的な見方を示す有識者が相対的に多いことが明らかになりました。

【10年後の北東アジア】


5.北東アジアの平和的秩序形成のために必要なもの

 北東アジアにおける平和的秩序を形成するために、どのようなことが必要になるかを尋ねたところ、「パワーバランスの維持」が45.6%で最も多く、「様々な課題に対する政府間の協力関係の構築」が41.8%、「民間レベルでの対話や交流など平和を実現するための環境づくり(基礎工事)」が30.1%で続きました。日本を含む各国政府の外交・安全保障政策を重要視する人が多い一方、民間レベルでの取り組みに期待する声も3割に上ることが分かりました。

【北東アジアの平和的秩序形成に必要なもの】

「その他」の記述回答

  • 北朝鮮は異を唱えているだけで彼らのあるべき姿が描けていないと考える。しかし、内政的には自らの思想を否定する反体制組織が存在しないので、金王朝が存続し得ると判断できればその体制を維持するのみであろう。しかし、多極的な環境での自国を想定した途端に何者へのコメントも論じられないお積りだろうとしか関連できない。(男、60代、NPO・NGO関係者)
  • 価値観の共有(男、60代、学者・研究者)
  • 中国は海への領土を広げていくし、韓国が素直に日本との仲をフランクにすることは、あと2世代あとでも無理でしょう。北東アジアの教育前の純粋な子供たちを、感情的に安定した日本で自由な教育を受けさせて、同じ環境で平和な世の中を創造しないと平和はないですね。同じことは中東の子供たちにも言えますね。(男、50代、自営業)


6.安倍政権の政策は北東アジアの平和的秩序形成に意味があるか

「北東アジアの平和秩序」という観点からの安倍政権の評価は分かれる

 最後に、安倍政権の外交・安全保障政策は、北東アジアに平和的な秩序をつくる上で意味があると思うか尋ねました。その結果、「そう思う」と「そう思わない」がいずれも35.9%となり、評価が二分される結果となりました。「どちらともいえない」は25.2%でした。

【安倍政権の政策は北東アジアの平和的秩序形成に意味があるか】

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