「日米中韓4カ国対話」非公開会議 報告

2019年1月16日

日米中韓を代表して4人が語った「北東アジアに平和秩序をどう実現するか」
日米中韓の識者11人が白熱した議論を展開「日米中韓4ヵ国対話」で何が語られたのか
⇒ 「北東アジアの現状についての有識者調査」結果 はこちら


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北東アジアの危機管理は不十分 ――日米中韓、共有ビジョンはあるのか

 北東アジアの平和構築に向けた「日米中韓4カ国対話」は1月16日、東京・千代田区の学士会館で開催されました。公開での4カ国対話に先立ち、午前には非公開会議が行われ、北東アジア地域での平和構築について率直な意見交換が行われました。

 会議ではまず、言論NPO代表の工藤泰志が、「北東アジアに平和を構築するには、戦争をしないシステムを作らなければならないが、この地域の危機管理は不十分だ」と語り、関係国の意見交換の重要性を語りました。そして工藤は、北東アジアの安全保障の課題として、北朝鮮の非核化と米中間の対立を挙げ、今回の対話を通じて現在進行形の状況について意見交換をしつつ、北東アジアの課題を共有し、最終的にはこの地域に平和的な秩序を構築するためのスタートにしたい、と今回の対話の意義を語り、参加者に協力を求めました。

 北朝鮮の非核化の行方に懐疑的な見方が広まりつつある中、米中貿易摩擦が激化し、緊張関係が続いている中、日本の元政府関係者は、「台頭する中国をアメリカが抑え込みに入り、構造的対立が起きている。戦略的判断をミスすれば、米中が衝突する危機があるのではと心配している。米中が新たな時代をどう統治するか、その話し合いに決着がつくまで、緊張関係は続くのではないか」と、米中対立が中長期的に見ても継続するのではないか、との懸念を示しました。

 アメリカでアジアを担当してきた元政府関係者は、「北東アジアに平和をもたらすには、日米中韓4カ国に共有ビジョンがあるかどうかが大事。一方で、米中関係でビジョンが乖離しており、お互いの違いを認めていくのか、相互で管理できるようにするのか」どのようなビジョンを今後描いていくべきか、と議論の必要性を主張しました。また、「あらゆるものが繋がってきている時代に、人との関係もオール・オア・ナッシングではない。いつも紛争があるわけではなく、原則を守って、信頼を再構築していくことで緊張をといていく」(アメリカの参加者)との意見や、さらには、米中両国に「共通基盤があるということは、共通利益があるということ。米中にはそこを管理できる余地があるし、協力できるところもあるはずだ」と米中の危機を嘆くだけでなく、前向きな意見が次々と表明されました。

 一方で、「今の社会のシステムは疲弊している。再設計が必要で、変わりつつある状況の中で、昔、言われた勢力均衡、そのバランスを新たに定義できるのか。将来の新設計をトランプ大統領は持っていないようだが、その責任を共有しなければいけない」との意見も出されました。

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米中は、共に世界秩序のステークホルダー

 中国の参加者は、「米中二カ国は、そんなに異なった国ではない。私たちは世界秩序のステークホルダー(利害関係者)として既得権益を持っている」と述べ、中国と北朝鮮との違いとして、現在の世界秩序から利益を得ているかどうかという点を挙げました。その上で、「現行の世界秩序を維持し軋轢を解消して、私たちの利益を追求するのが最も良い道だ。中米両国は合理的な話し合いができておらず、緊張は高まっているが、協力して共通利益を求めていきたい。世界秩序維持は、お金がかかる事業だが、中国はただ乗りはできない」と、中国側からも積極的な意見が述べられました。

 一方、北朝鮮の非核化では、朝鮮半島に平和が来なければ北東アジアに平和はない、という共通認識は各国で共有され、非核化という目的では合意しているものの、解決手段では違いが浮き彫りになりました。さらに、"統一朝鮮"で、関係各国がどのようなイメージを描いているのか、と朝鮮半島の将来像を問う声が挙がる等、朝鮮半島の将来については、各国での乖離が見られました。

 また、アメリカ側からは、今や北朝鮮は最重要問題ではなく、IOT、5G、AIを誰が所有し、コントロールするのか、そのルール作りの戦いが待っている、と米中経済摩擦が近いうちに直面するであろう姿を指摘する意見も述べられるなど、活発な意見交換が行われました。

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 この非公開会議での率直な意見交換を経て、議論は午後の公開フォーラムに移りました。

日米中韓を代表して4人が語った「北東アジアに平和秩序をどう実現するか」
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