2006.6.16開催 アジア戦略会議 / テーマ「資源エネルギー戦略」

2006年6月16日

アジア戦略会議
 言論NPOアジア戦略会議では、国際協力銀行の前田匡史氏を交え、アメリカや中国の国際戦略の中で日本は資源エネルギー戦略をどう構築すべきかを中心に議論しました。

前田匡史氏スピーカー:前田匡史氏(国際協力銀行資源需給問題担当審議役)

 6月16日のアジア戦略会議(座長:福川伸次)は、現在、資源エネルギー問題の第一人者として活躍している、国際協力銀行特命審議役(資源需給問題担当)の前田匡史氏をゲストスピーカーにお呼びして開催しました。

 資源エネルギーの分野は、アジア戦略会議が行ったパワーアセスメント作業では、日本にとって戦略的重要度は高いものの、「弱い」とされた分野でしたが、その際に行ったアンケート調査からは、日本の有識者の多くが、資源エネルギーと密接な関係がある環境分野を、日本がその強さを活用すべき戦略的重要度の高い分野と考えていることが分かりました。その後、昨年の国際シンポジウムで私たちが提示した、日本は「世界のソウトリーダー」として「アジアの知のプラットフォーム」の創出を目指すべきとの仮説においても、そこで念頭に置かれていた一つの要素が環境分野での日本の強さの活用ということでした。

 今回の議論は、アジア戦略会議が現在進めている、こうした仮説の検証作業に加え、言論NPOが取り組んでいる日中の議論交流という観点からも重要な意味を持つものでした。昨年8月の第一回北京-東京フォーラムで、日中の今後の可能性として一つの焦点が当たったのが、資源エネルギー分野での協力だったからです。今年8月に東京で開催される第二回北京-東京フォーラムでは、これを大きなテーマの一つとして掲げることを考えています。

 前田氏は、外交問題評議会を始め、アメリカ側でも様々な議論の場に参画して、アメリカのエネルギー戦略などの研究を行っていますが、今回の会議では、中国のエネルギー安全保障に対するアメリカの戦略という切り口から、日本がどのような資源エネルギー戦略を構築していくべきなのかについてスピーチが行われ、その後、日本の全体的な国家戦略の構築のあり方について、メンバーとの間で熱心な議論が行われました。

 こうした議論から浮かび上がった一つの論点は、エネルギー安全保障という切り口からみても、日本には各省庁や各セクションの部分戦略はあっても、全体戦略を構築する体制が決定的に欠如しており、それが、例えば資源の権益確保や最近のイラン問題などへの戦略的対応をも困難にしているということです。確かに、日本には環境技術などの個々の「強さ」はありますが、重要なのは、それを活用する国際的な枠組みやスタンダードそれ自体を構築することであり、日本がその力を持たないという状況は、私たちが到達した仮説を実現する上で大きな制約になっていることが示唆されました。

 そして、こうした問題を克服するために、各界横断的な議論の場を拡充し、それを日本の政策や戦略形成につなげていく体制を構築することの重要性が確認されました。
まさにこのような要請にも応えられるような議論の場に少しでも近づくことを目指しつつ、アジア戦略会議では今後とも、日本の将来選択に向けた議論形成を図っていきたいと考えています。

▼ 前田匡史氏の発言要旨を読む(会員限定)

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今回の出席者は以下の方々でした。(敬称略)

前田匡史(国際協力銀行資源需給問題担当審議役)

福川伸次 (機械産業記念事業団会長・元通産省次官)
黒川清 (日本学術会議会長)
周牧之 (東京経済大学経済学部准教授)
深川由起子(早稲田大学政治経済学部・国際政治経済学科教授)
松田学 (財務省、言論NPO理事)
横山禎徳(社会システムデザイナー・言論NPO理事)
工藤泰志 (言論NPO代表)

 言論NPOアジア戦略会議では、国際協力銀行の前田匡史氏を交え、アメリカや中国の国際戦略の中で日本は資源エネルギー戦略をどう構築すべきかを中心に議論しました。