分科会 【 中日関係とアジアの未来 】 レポート

2007年8月28日

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中国側司会:
    周牧之 (東京経済大学教授マサチューセッツ工科大学客員教授)
パネリスト:
    趙啓正 (全国政治協商会議外事委員会副主任)
    王英凡 (全国人民代表大会外事委員会副主任)
    呉建民 (中国外交学院院長)
    白岩松 (中央テレビ〈CCTV〉キャスター新日中友好21世紀委員会委員)
    賈慶国 (北京大学国際関係学院副院長・教授)
    李 玉 (北京大学国際関係学院教授)
日本側司会:
    国分良成 (慶應義塾大学法学部教授 同大学東アジア研究所所長)
パネリスト:
    松本健一 (評論家、麗澤大学国際経済学部教授)
    宮本雄二 (在中国日本国大使館特命全権大使)
    岡田克也 (民主党副代表 衆議院議員)
    竹下亘 (衆議院議員〈自民党〉)
    上田勇 (衆議院議員〈公明党〉 国際副委員長)

 分科会「中日関係とアジアの未来」は、今回のフォーラムのメインの会場であるクンルンホテルから場所を移して、多くの大学生が集まる中、北京大学の百周年記念講堂にて開催されました。6つの分科会の中では唯一、そこにはインターネット中継が入り、かつ大学生を中心としたフロアとの活発な議論が行われました。

 進行は、中国側は東京経済大学教授の周牧之氏、日本側は慶應義塾大学法学部教授の国分良成氏によって進められました。

 
 まず、問題提起が中国側より趙啓正氏(全国政治協商会議外事委員会副主任)、日本側より岡田克也氏(民主党副代表、衆議院議員)によって行われました。趙氏は「中日関係については、アジア全体の枠組み、そして世界全体の枠組みにおける重要性について話し合う必要がある。今回は、若者へ広く開放された集まりにしていきたい」と述べました。一方、岡田氏はナショナリズムの問題、戦後日本の果たしてきた役割、格差問題の三点を提起しました。
 

 その後は各パネリストによる発言が行われました。王英凡氏(全国代表大会外事委員会副主任)が「中日の戦略的互恵関係は本当に安定的に発展できるかが鍵」と述べたのに対し、宮本雄二氏(在中国日本国大使館特命全権大使)は「国家が何のために存在するかを考えてほしい。日中がどのような枠組みで協力できるか、一歩一歩進めていくしかないと実感している」と発言しました。
 
 分科会の後半では、フロアからの積極的な質疑に基づいた議論が行われました。偏狭なナショナリズムの問題を提起した岡田氏に対し、人民大学の学生から、日本政府はその台頭を抑止することができるかとの質問がなされ、岡田氏は「日本は民主主義国家なので、 政府が一方的に押さえ込むことは相当な限界がある。そのような中で、政治家が冷静な議論をしていかねばならない」という考えを示しました。中国農業大学金融学科の学生から提示された台湾との外交関係と歴史問題に関する質問に対しては、竹下亘氏(衆議院議員(自民党))が「台湾と国交は結んでいないが、鳥インフルエンザのような国境を越えて解決すべき問題に関しては、国交のあるなしに関わらず、台湾も含めた国際社会に日本は貢献すべきだと考えている」と答えました。


 歴史問題に関して松本健一氏(評論家、麗澤大学国際経済学部教授)は、「日本にとって、第二次世界大戦にはアメリカとの帝国主義戦争と、中国に対する帝国主義的な侵略戦争という二つの面があり、現在の若者の間で後者の認識が薄れつつある」と説明しました。また、外交学院の日本語専攻の学生からの「開かれたアジアはどこまで貫く必要があるか、境界線は必要か」という質問に対して、呉建民氏(中国外交学院院長)は「『開かれた』というのは、地域的な境界線は必要としつつも、外部に対してオープンな姿勢を示さなければならないということである」と述べ、Consensus, Consultation, Cooperation, そしてOpennessという四つの重要な要素を基準として、この10年における東アジアの成果を強調しました。
 

 最後に、日本側司会の国分氏が議論の総括を行いました。同氏は、ひ弱な側面も存在する戦略的互恵関係を固めていくことの重要性を強調し、その上で日中両国の共通の利益を明確にすることが必要であると指摘しました。また、共通の利益と同時に、そこには共通の価値というものも伴うべきであるとし、私たちは人類が築き上げた価値を大事にすることで、その中から日本と中国の協力の余地が無限に広がるとの認識を示しました。