分科会 【 アジアの安全保障と中日の役割 】 レポート

2007年8月28日

p_070828_b2_07.jpg
写真をみる
議事録をよむ(会員限定ページ)

※会員制度についてはこちらをご覧ください。

中国側司会:
    王逸舟 (社会科学院世界経済・政治研究所副所長)
パネリスト:
    熊光楷 (中国国際戦略学会会長 前副総参謀長)
    陳昊蘇 (中国人民対外友好協会会長)
    唐聞生 (全国政治協商会議 香港・マカオ・台湾華僑委員会副主任)
    呉寄南 (上海国際問題研究所学術委員会主任)
    劉江永 (清華大学国際問題研究所副所長・教授)
    金熙徳 (中国社会科学院日本所副所長・教授)
    朱 鋒 (北京大学国際関係学院教授)
    彭宏偉 (中国国際戦略基金会執行理事)
    李秀石 (上海国際問題研究所日本研究室主任)
日本側司会:
    若宮啓文 (朝日新聞論説主幹)
パネリスト:
    仙谷由人 (衆議院議員 元民主党政調会長)
    添谷芳秀 (慶應義塾大学法学部教授)
    中谷元 (衆議院議員(自民党) 元防衛庁長官)
    西原正 (財団法人平和安全保障研究所理事長 前防衛大学校校長)


 この分科会で出たいくつかの論点のうち、最も重要な論点となったのは、日中がいかに戦略的互恵関係を構築するかでした。これを基調としつつ、具体的に話し合われたのは、北朝鮮を巡る六カ国協議、日中双方の軍事力の現状、それぞれの軍事戦略の透明性の問題や、お互いの認識ギャップ、台湾問題といったテーマでした。この中でも特に、台湾問題や、六カ国協議の枠組みを新しい東アジアの戦略的互恵関係にいかに発展させていくかという点に、議論の焦点が当たりました。


 台湾問題に関しては、中国側から、中国人は祖国の統一問題を非常に重視しており、台湾問題の重要性は中国人であれば皆が十分に理解していること、台湾問題に過敏に反応しているのではなく、そこにアメリカの存在があることが問題を複雑化させていること、より根本的な解決のためには、国民感情の改善が必要であることなどが表明されました。また、かつて日本と中国との間で台湾に関する関係の合意がなされたにも関わらず、近年ではそれを突破しようとする動きが出てきており、21世紀に入って副大臣クラスが台湾を訪問していることは、中国に対抗する動きであり、不可解であるとして、この問題に関して規制を加えるべきであるとの意見も出されました。

 これに対して、日本側の添谷芳秀氏からは、日本は台湾の現状維持を公言しており、それを最も明確に表明しているのは日本であるが、中国に過度の協力をしているとして日本の中の右側の人々の反対に遭っていることが、中国にはそのような印象を与えているのではないかとの指摘がなされました。

 
 戦略的互恵関係に関しては、日本側の仙谷由人氏より、日中二国間だけでなく、これからは多国間での協力関係を作っていくべきであり、こうしたメカニズムを今後の協力体制の発端としたいとの意見が出されました。同氏は、戦略的な互恵関係はあらゆる分野で出来ることをやり始めなければ達成できないとして、例えば、アジアで共同の海上警察を作るなど具体的な事例を構築していくことも今後の課題だとしました。


 中国側からも、今後は社会的な問題も含め包括的なリスク管理システムを立ち上げる必要があるとの意見や、東アジアの安全保障についての問題は朝鮮問題と台湾問題であることは明確であり、日米同盟など冷戦が残したシステムでは、これらの問題には対処できないこと、だからこそ6カ国協議が出来たのであり、強固で集団的、強制的な力を持つメカニズムが必要であって、6カ国協議はその始まりだと言えるよう、その枠組みをしっかりさせていくべきであるといった考え方も提示されました。
 

 全体の討論を通して、台湾問題については、まだ相互理解に欠ける部分も見られ、いくつか意見の食い違いが残りましたが、この問題が二国間の国交に大きな影響を与えていることを踏まえて、食い違いを正し、お互いに信頼が持てる関係を作るべきであるという結論になりました。

 また、戦略的互恵関係については、日中双方とも多国間での協力を重視しており、六カ国協議をその発展の基礎として、アジアのみならず世界に影響を与えるような協力体制、組織へと進化させていくべきであるという点で合意が得られました。そのためにも、まずは日中の二国がお互いを認め合い、理解し合った上で他のアジア諸国をリードしていくべきであるという点でも意見の一致が見られました。