言論NPOとは

言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係わる自己評価結果に関する意見 (2006年6月報告) / 言論NPO監事 田中弥生

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kanji-tanaka.jpg田中弥生(東京大学)
たなか・やよい
profile
東京大学社会基盤学専攻 寄附講座国際プロジェクト助教授、(株)ニコン、笹川平和財団、国際協力銀行をへて現職。国際公共政策博士(大阪大学)、政策メディア修士(慶応大学)。
外務省ODA評価有識者委員、内閣府公益法人制度改革委員会有識者委員、政府税制調査会特別参考人、参議院行政改革委員会 参考人などをつとめる。日本NPO学会副会長。
専門は非営利組織論と評価論。ピーター・F・ドラッカー氏に師事。
主な著書に『NPOと社会をつなぐ ~NPOを変える評価とインターメディアリ~』(東京大学出版会 2005年)、『NPO 幻想と現実 ~それは本当に人々を幸福にしているのか』(同友館、1999年)、『アジアの国家とNGO』(重冨真一編、分担執筆、明石書店2001年)、訳書にドラッカー・スターン著『非営利組織の成果重視マネジメント ~NPO、公益法人、自治体の自己評価手法~』(ダイヤモンド社、2000年)ほか。

言論NPOの「非政治性・非宗教性」に係る自己評価結果に対する意見 2006.6.24

1.本自己評価の意義について

(1)民による民間非営利組織の評価

 今回、言論NPOは非政治性・非宗教性に関わる自己評価手法を開発し、平成17年度の全活動について評価を行ないその結果を公開しようとしている。この試みは、一個のNPOとしてのアカウンタビリティを果たすのみならず、我が国のNPO界においても大きな意義があると思われる。

 1998年12月のNPO法施行以来、NPO法人数は急増し、現在では2.6万件にまで昇っている。だが、同時に行政の業務委託や補助金などの資金のパイプが太くなっており、収入の8割、9割を公的資金に依存する団体数も少なくない。他方、寄付金の集まり方は少なく、数千万円以上の事業規模の団体でも0円が約20%となっている。公的資金のパイプが太くなる一方で、寄付や会費など民間による支援金のパイプは細くなっているのだ。

 寄付をないがしろにすることは、自由度の高い資金源を失うだけでなく、民間からの支持基盤を脆弱にするという問題を孕んでいる。ドラッカーの言葉を借用すれば、寄付者や会費、あるいはボランティアとしてそれを支援する人々、NPOのサービスを受ける人々はそれぞれが顧客であり、顧客はNPOのパフォーマンスを評価し、納得がゆくものであればNPOを支援し、あるいはそのサービスを利用するのである。そして、これらの顧客がNPOを選択する際の判断材料を提供するものが評価情報なのである。

 さらに、NPOセクター全体でみた場合、公的資金のパイプが太くなり、民間資金のそれが細くなるということは、行政機関からのチェックや評価を受ける機会に比較し、民間からのそれが少なくなることを意味している。公益法人法は110年前に制定されたもので、最初の民間による公益活動を定めた法律である。だがこの法律の根底にある思想は「何が公益であるかは国家が決める」というもので、民法典編纂以来この思想が貫かれていた。その法律も今年ようやく改正され、公益の判断を民間で行なう、というものへ思想の転換が図られた。だが、公的資金の依存度がこうも高くては、NPOの公益性の判断は相変わらず官側に委ねられることになるのだ。

 NPO法人が自ら評価基準と方法を開発し、それを広く市民に公開する試みは、民間の支持基盤を強くし、公益の判断を民が行なうシステム構築への挑戦という深遠な意味をもっている。

(2)国際的水準からみた、政策評価・政策提言活動の評価

 言論NPOは米国内国歳入庁の資料を参考に、主として政策提言や評価などのアドヴォカシ−活動の評価基準を開発した。我が国ではアドヴォカシ−活動の重要性の認識はまだ低いが、国際社会ではその認識は高く、またこのような活動に従事する国際NGOのプレゼンスはますます高まりつつある。このような中、OXFAM、アムネスティ・インターナショナル、Transparency Internationalなど大手の国際NGOが協同でアカウンタビリティ憲章を2006年6月に発表した。自らの行動とその影響について、行動倫理基準を作り、受益者、ドナー、市民など幅広いステイクホルダーズに対してどのような説明責任を果たすべきなのかを示した指針である。中でも着目したいのが、アドヴォカシー活動に関する規定であり、「責任あるアドヴォカシー」(Responsible advocacy)の項では、その内容が組織の使命と一致するものであり、どのような政策的ポジションをとるのかについては、そのプロセスの透明性を維持し、関係者間でコンフリクトがあった場合にはその解決方法が明確にされている必要があることが記されている。

 言論NPOが開発した評価基準は、先の項目よりも、より具体的で日常業務に即したかたちのチェック項目として記されており、より実践的、実効性の高い内容となっている。したがって、言論NPOの自己評価の試みは国際社会の潮流に適合するに留まらず、より具体的な評価基準として提示した点は注目に値する。

(3)非政治性・非宗教性と中立性の問題

 本自己評価基準を開発した契機に、「しかるべきNPOであるからには政治的中立性を証明せよ」という要請があった。だが、政治的に中立であることを積極的に説明するとは、どういうことなのか。これは実効的にも、また論理的にも不可能な要請である。

 しかしながら、偏りなく有権者のエージェントとして活動することを使命とする言論NPOにとって、それが特定の政治運動や宗教活動に加担しているものでないこは説明しなければならない。ここで開発された評価基準は、積極的に政治的中立性を説明するのではなく、政治運動に加担していないことを説明するネガティブ・チェックリストとして工夫されている。この点は開明的である。また、ネガティブ・チェックリストによる評価で要検討と判断されたものを更にコンテンツ判定基準で評価するように設計されており、評価に求められる論理性、緻密性が担保されており、方法論としての完成度も高い。
 

2.評価結果について

 自己評価結果について異論はないが、以下の点を付記したい。

(1)評価対象と分析

 評価対象を、言論活動(7事業)と、公報などの活動に区分し、それぞれ対象別に評価分析を行なったことは適当である。

 欲を言えば、分析記述のあり方に工夫が必要で、例えば「特定の政治的な立場を超越した活動であって、予め特定の政治的立場にたった議論形成方式ではないことが明確である」と記されているが、特定の政治的な立場を超越した活動では抽象的であり、具体的な記述による説明が必要である。例えば、評価基準の作り方、評価協力者へのオリエンテーション、点数やウエイトの付け方などのプロセスが政治的な偏りを回避する仕組みになっていることを説明したほうが説得力がある。

(2) 改善点

 各活動の課題が具体的に記されている点は重要で、翌年度の課題、目的を示唆することになるので、今後もこのように記すことが望ましい。
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