言論スタジオ

国際社会からみた日本

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2011年11月22日(火)収録
出演者:
黒川清氏(政策研究大学院大学教授)
松浦晃一郎氏(日仏会館理事長、前ユネスコ事務局長)

司会者:
工藤泰志(言論NPO代表)




放送に先立ち緊急に行ったアンケート結果を公表します。ご協力ありがとうございました。


第3部:日本の存在感をどうやって高めるか

工藤:最後のセッションの議論を始めます。つまり、日本が今後、存在感をきちんと持って、未来のために動くためには何が必要か、ということなのですが、これについてもアンケートをとってみました。つまり、日本の存在感を高めることは可能なのか、ということで聞いてみたところ、やはり、「可能だ」と回答する人がかなり多くて81.5%でした。それは危機感の問題か、やる気の問題なのか、どちらかはわかりません。その理由をいくつか紹介したいのですが、「当たり前のことをちゃんとやれるような政権になってほしいし、国民もそれを支えるだけの知恵を持つ」という意見とか、「今の「他人任せ」は止めにして一人一人が知恵を出し、発言し、または汗をかかなければ2位、3位どころか、10位とずるずる後退し続け」るだけだとか、「国際的に活躍できる人材をつくっていくしかない」とか、「30年後を見据えて教育システムを改革する」とか、「もともと経済規模だけで、理念を持たない国家で、存在感がなかったということを再認識した上で、これからどうしていくのか、ということを考える段階にきたのではないか」といったように、ポイントをついた意見が、かなり寄せられました。
さて、どういう風にして、日本の存在感をさらに上げていくことができるか、ということをお聞かせください。


学部生のうちに海外に出て、世界を実体験せよ

黒川:多分3つぐらいあると思うのですが、今回、明らかに出てきたのは、そういう動きがあったのですが、やはり社会企業家と言われるような若い人が、NPOをつくりながら、それをサステイナブルにしていこう、ということが東北でもたくさん出ているし、さっき言ったクリントン財団でも若い人が随分出てきています。そういう人たちを、もっともっと支援する。パブリックが、偉いよね、という支援システムをつくっていく。言論NPOもそうなのだけど。2番目は、若い、大学にいる内に、半年でもいいから海外に出ること。これは、グローバルになってきているから、アメリカもイギリスも、元々、リーディングユニバーシティーということで、学部にいる間に海外に出そうということをしています。というのは、世界の問題を実体験として学ばせようということです。そうすると、突然、自分のことを外から見出すので、愛国心も出てくるわけです。この経験があまりにも少ないので、私は授業料を4年分払ったら、5年で自分のカリキュラムをつくろうという、休学の奨めというのをやっています。

新卒にこだわる大企業などはどうしようもないのですが、この間、東京大学が秋卒業を検討します、入試も見直しますというと突然、企業も焦り始める。僕は、東大総長機関説というのを言っているのだけど、言うことが大事なのであって、それだけで動き出すから。そうすると、会社も4月に採用した人と、9月に採用した人の給料をどうするのか、みんな考え出します。でも、それ自体が変革だと思います。もう1つ大事な事は女性です。日本は、あまりにもジェンダー・エンパワーメント・インデックスが、世界の100の国だと半分以下です。やはり、社内重役をつくるにしても、女性をもっと積極的に、意欲的に抜擢することが大事で、世界中はこの10年で猛烈に変わっています。日本は公務員、国会議員は12%ぐらいだと思いますが、明らかに相当遅れています。しかも、企業のボードなんて、ほとんどいません。やはり象徴的な人事をするべきですね。例えば、大学のトップに女性をもってくるとか。私は、東大はそれをやればいいと言っています。

工藤:それ、10年ぐらい前から言っていませんでしたか。

黒川:やれないの。だから、それが1つ。それから、もう1つ凄く大事なことは、こういうムーブメントはあるのですが、リーダーが言っているだけでエグセキュートしないのですよ。だから、企業にしろ、今までのルールだと言って、それが一番問題です。さっき松浦さんが言った通りで、今、これだけの色々なことがあるにもかかわらず、若い人達はもっと怒るべきです。

若い人達が怒ると言うと、インターネットやFacebookやツイッターというけど、なぜチュニジアやエジプトみたいなことが起こらないのか。今、ロンドンでもアメリカでも起こりました。起こらないのは日本だけですよ。このオキュパイ・ウォールストリートというのは10月17日から始まったのですが、これは意外に凄い広がりを持っています。非常にピースフルです。これから、オキュパイ・何とかというのがどんどん出てきて、いずれ「オキュパイ・霞ヶ関」とか、「オキュパイ・国会議事堂」みたいな運動になってくるかと言えば、みんな横並びで、回りを見てから行動するという癖がついてしまっているから多分ならないと思います。ただ、女性の方が早く動き始めるかもしれないな、ということを、私は楽しみにしています。

工藤:松浦さんはどうでしょうか。


国際的な視野で考え、議論せよ、そして発信を

松浦:今、黒川さんがおっしゃられたことには、みんな賛成ですから、ダブらない形で申し上げれば、私は、日本の人々、特に若い人達がもっと国際的な視野を持つという努力をしなければいけないと思います。もちろん、教育は重要ですから、教育でもやっていただきたいけど、これから何年もかけて教育していく、というのでは間に合いません。ですから、既に社会で働いている人も含めて、もっと色々なことについて、国際的な視野で考える。そして、日本語でいいから、みんなで議論をする。どうも、日本の社会は、議論するという慣習が少ないと思います。特に、東大の法学部というのは、大学の先生が講義して、それを一方的に聞いてノートをとっていれば、いい点をとれます。ところが、それではダメなのです。日本の教育も昔に比べれば変わってきていますが、もっと先生と議論するのみならず、学生同士でもしっかりと議論するということが必要だと思います。

官庁もそうですが、大会社などはしっかりとしたヒエラルキーができているから、今度のオリンパス事件がいい例ですが、上が決めたことは、下は変だと思っても矯正しない。矯正したら、社長でもクビになってしまいます。ですから、ヒエラルキーに入ってしまうと、なかなかできないけど、自由に議論をする雰囲気をつくって、ハイランクの上の人たちも、そういうことを認めていく。私はユネスコ時代によく言ったのは、「私が言ったことに対して、反対でもいいから、どんどんチャレンジしてこい」と。ただ、私が最終的にみんなの意見を聞いて決めたら、それは実施して、不満のある人は去ってください、と。その代わり、私が決めたことが間違っていたら、私は責任をとりますということをはっきりと言っていました。そのプロセスでは、みんなで議論をする。だから、会社のトップにしろ、もっと議論をさせなければいけないのに、今度のオリンパス事件は典型的で、上の言ったことをその通り受け入れちゃうというのは、非常に残念です。

日本の国民は忍耐強く、秩序を重んじるという良い面があるのだけど、それが悪い形で出てしまった。それから、3番目は、今は、英語が国際用語になっています。よく言われるように、日本の人たちの英語力は世界でも最低です。しかし、国際的に発信するという時には、英語を使う。具体的に言えば、話して、ディスカッションをする。英語の能力は150カ国中、135番目。アジアでも、韓国は60番台ぐらいですが、中国、ベトナム、インドネシアよりも下です。私は、これは日本人が従順であるということを反映していると思うけど、英語教育の在り方、つまり、重箱の隅をつつくような文法を勉強するのではない。そんなことは、実際に社会に出ると役に立たないのですよ。英語というのはコミュニケーションの手段だから、自分の言いたいことをしっかりと言い、議論し、国際的にも発信するということをやっていかないといけないと思います。

工藤:日本でも、原発問題などを見ていると、これまで当たり前だったということを、生活の視点から、これは違うのではないか、ということに気づき始めていますよね。しかし、自己主張するということに関して、なかなかできない。本来なら、これはちょっとまずいのではないか、という段階にきています。なぜこれが起こらなくて、どうしたら起こってくるのでしょうか。


世代間闘争が若者の芽をつんでいる

黒川:1つは、政治が悪いとか言って、5年間で6人目の首相というのは、とんでもない話だということは、みんな思っているわけです。そういうことを言うけれど、メディアは必ず、それは国民が選んでいるのだと言いますよ。だけど、普段メディアは何をしているのか。今回でわかったことは、あれだけの大事件が起こっているにもかかわらず、メディアはみんな権力の方にすり寄っているだけだ、ということがよくわかりました。しかも、記者クラブという形で、他の人を入れないというのはとんでもない話です。だから、記者クラブのいいところ、ということでディフェンシブに言うけど、大手メディアは本当にみっともないということが分かってしまった。今回のオリンパスの時も、ネットを見ると直ぐにわかるのだけど、ウォールストリートからもどんどんインタビューが出ていました。その時に、「何をやっているの。あなたたちは書かないのか」とある新聞社に電話したら、「何の話です」と言うわけです。そうしたら、あなたたちはオリンパスが記者会見するからその場に行って、言われたことを書いているだけでしょ。それは共同通信がやることで、あなたたちの仕事ではない、ということを言いました。そして、経済紙でも出始めたのは3日後ですよ。そういうセンスでやっていること自体が、ジャーナリストなんていなくて、結局は、みんな会社員だということです。そういう人が辞めずにどんどん仕事ができるというのは、終身雇用という今やない制度にこだわりすぎているということですよね。だから、上の人は、今、逃げ切ろうとしているだけの話で、下の人たちはそれを押しのけようとしているのだけど、そのエネルギーがなかなか大きなものにならない。確かに、日本はグローバリゼーションの経済活動が広がっているのは確かですが、それより世代間の闘争の方がはるかに大きくて、若者の芽を摘んでいるなと私は思います。

工藤:そう考えると、若者の将来はかなり大変ですよね。
黒川:彼等の将来はないかもしれない。凄くまずいですよ。特に女性は。

松浦:私も、まさにそう思います。先程から話題になっている、日本が抱えている諸問題。少子化、高齢化、人口減少、政府の大借金、それからエネルギー問題、元々ある食料問題、こういう一連の問題を一番感じるのは、次の世代、次の若い人達ですよ。私たちの世代は、4人で1人の老人を支えればよかったけど、3人になり、2人になり、将来は1人で2人の老人を支えなければいけないことだってあり得るのです。そういうことは、実際には起こりえないのですね。私よりも今の中年の世代がもっとしっかりしてほしい。そして、今の若い世代ももっと怒りをもって、自分達の抱えている問題をしっかり分析して、それを表現してほしいと思います。

工藤:さっきのアンケートでも、そういうのが2つありました。1つは、「最近の政治は議会闘争ばかりで、年金、医療も費用の負担の話はしているけど、20年、30年後の姿を何も示しておらず、全く、有権者の立ち位置に立っていない」という意見でした。それはまさにそうで、選挙の時にはどうだとか、今の話だけですよね。もう1つは、「私は、この頃思うようになりました。自分は、未来の日本人のために働きたいです」と、40代の人からの意見でした。なので、そういうところから日本の変化が始まりながら、その時々に、我々は自分達の将来と同時に、世界のグローバルアジェンダに、こういうことを考えたいとか、その中で行動するとか、そういう循環が始まれば存在感が上がっていくわけですね。

黒川:それは始まりつつあるのだけど、そのスピードがないと、今まであまりにも変わっていないというか、その抵抗勢力が潰されていたので、そこのところが、急成長する。世界の先進国はみんなファイナンシャル・クライシスでダメになっている。ここを、どういう形で日本が埋められるか、ということです。今、GDPで3位になったけど、インドが急成長しているから、そのうち抜かれると思います。この前、日本で原発関連の6万人のデモがありましたが、あの時に、外国のメディアで20~30人理由なく拘束されたらしいです。後で調べてみてください。そういうことをちょっと聞いたので、調べてみようと思っています。

工藤:メディアの報道も分かれましたよね。
黒川:そういうことは絶対に書かない。
工藤:書かないだけじゃなくて、デモそのものを書かないところもありました。

黒川:この前のデモはさすがに大きくて、NHKのニュースでも出したけど、新聞社がどこ見ているかわかるでしょう。

工藤:そろそろ時間がなくなってきたのですが、この中で若い人達を始めとして、色々な人の成長が問われるのだけど、世界的に国際社会で通用する人物を育てていくためにはどうしたらいいか。体験も交えながら、最後に語っていただければと思います。
その前に、松浦さんに聞きたかったのですが、ユネスコでは、日本の若い世代の人たちがどんどん入って、競争をしているという現象はないのでしょうか。

松浦:それはありました。国連のシステム全体で言えば、日本人の職員は非常に少ないです。分担金に応じた日本人の職員がいないとよく言われます。ところが、幸いにして、ユネスコだけは私がトップになったこともあり、日本国内でビジビリティがあがったこともあったし、多くの人が手を挙げてきて、ユネスコでは分担金に応じたレベルの日本人職員の数になっています。ただ、中身を見ると、ユネスコの場合は英語だけでダメで、フランス語もできないといけません。これが、日本人にとっては厳しいのですが、帰国子女とか若いときから外国でまず英語を学んで、その後フランス語を学んだという女性が圧倒的に多いです。国連本部や他の国連の機関だと英語だけでいいのですが、ユネスコの場合はフランス語ということがあるものだから、入り口の敷居が高いです。ただ、それでも、それを乗り越えて入ってくる日本人の女性、中には何百人との競争に打ち勝って選ばれることがあります。これは非常に嬉しいことです。

工藤:最後に、世界で通用する日本、日本人になるためには何が大事でしょうか。


もっと女性を活用すべきだ

黒川:今の所、女性は終身雇用、単線路線という言葉を信じていないでしょ。だから、女性ははるかにグローバルなパー・キャピタバリューが高い人が沢山いて、非常に能力の高い人が多いですね。しかも、自分でお金を貯めて留学しているから。一方の、男の人は会社か役所に払ってもらって行っているわけです。

工藤:すると、女性に期待しろという結論ですか。
黒川:当たり前ですよ。
松浦:しかし、男性もがんばってほしいですね。

黒川:だから、女性をもっと活用するべきなのですね。ゴールドマンサックスでは、女性をエンパワーメントするだけで、15%GDPが増えると言っています。それは、オランダぐらいのGDPですよ。

工藤:さっき黒川さんがおっしゃった、1年間休学して海外に行くという事は、1つの大きな方法ですね。

黒川:それはもの凄く愛国心を感じるし、日本のいいところと、悪いところ、弱い所が見えてきて、凄くがんばろうとしています。非常に素晴らしいです。


英語でコミュニケーションできる能力を

工藤:松浦さん、一言で、国際社会で通用する日本人になるためには何が大事ですか。

松浦:私は、コミュニケーション能力だと思います。英語でしっかりとコミュニケーションできる能力をつけてほしい。それは、もちろん、さっき申し上げたような一連のことを対応した上での話で、まっさきに英語ありきではありません。やはり、しっかりとした色々な見識を持ち、しっかりとした考えを持っていても、それを英語でコミュニケートできなければ、国際的な発信はできません。

工藤:わかりました。今日の議論はかなり面白かったのですが、明日もこの言論スタジオがあります。明日は、「COP17で問われる課題」ということで、地球温暖化について議論します。明日は、15時半からやりますので、よろしくお願いします。黒川さん、松浦さん、今日はありがとうございました。

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